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Twelve Y.O.

2008/10/14 21:56|こんな本を読みましたTB:0CM:0
Twelve Y.O. (講談社文庫)Twelve Y.O. (講談社文庫)
(2001/06)
福井 晴敏

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福井さんのデビュー作にして江戸川乱歩賞受賞作。

とにかく男臭いのは亡国のイージスでも同じですが、こちらは亡国のイージスより少し前のお話になっていて、両作品はリンクしています。

軍事アナリスト顔負けの詳細な兵器や軍隊に関する記述は、ハリウッド映画の湯水のごとくお金をかけた映像を言葉によって構築していくかのよう。

淡々とした語り口なのに、なぜか熱くさせられる。
たとえは違うかもしれませんけど、熟練の指揮者の下で演奏しているプレイヤーになったときの気持ちにちょっと似ています。指揮者は、冷静にタクトを振っているのに、なぜか演奏する我々の気持ちが高ぶって、熱く熱く演奏してしまう。そんな昔のことを思い出してしまいました。

政治的メッセージもありますが、これはエンターテインメントとして成立させるための方便であると私は考えています。娯楽として、一級品ですね。



コンセント

2008/10/12 21:19|こんな本を読みましたTB:0CM:0
コンセント (幻冬舎文庫)コンセント (幻冬舎文庫)
(2001/12)
田口 ランディ

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金融ライターとして活躍するユキの兄が死んだ。
定職につかず、引きこもりのようにして暮らしていた40歳の兄が消息を立って2ヶ月。
一人暮らしを始めようとしていたアパートで、餓死していた。
死後2ヶ月がたち、腐乱した兄の遺体が置かれていた部屋は、すさまじい臭気に包まれていた。
そこに、たった今掃除をはじめようとしていたかのように掃除機がつながれたコンセントに違和感を感じたユキ。また、それ以来人の体から立ち上る死臭を感じるようになり、さらに兄の姿を幻覚としてみるようになる・・・。


田口ランディさんの小説としての処女作ですね。

これを書き上げるまでにコラムニストとして十分な実力と人気を持っておられた方で、文章もこなれており、展開もよくなかなか面白い。特に冒頭の吹き荒れる嵐のようなスピード感は、読者をその世界に引き込むのに十分な力を持っています。

兄の死から、変調をきたし始めたために、大学時代の恩師にカウンセリングを受けるようになる彼女。彼女は、大学時代、カウンセラーになるために、恩師にカウンセリングを受けている途中に、恩師に恋愛感情を持ってしまい、関係を持つようになったものの、その関係を一方的に破綻させた過去。その過去を知る学生時代のゼミ仲間だった女性との再会。

こういった関係性から、彼女の過去から現在に至るまでの生や性の変転、その嗜好をあぶりだしながら、彼女の以降の行動を決定付けてゆきます。そして、物語はシャーマニズムに根ざしたスピリチュアルヒーリングへと展開してゆきます。

この展開の仕方も面白く、物語としての錬度は非常に高いと思うのですが、結末がどうしても許せません。

コンセントという題名にシャーマンからえられるその結末の連想は、あまりに陳腐だと思えるのです。

というわけで、星3つかな。

読み物としては面白いけどね。

1985年の奇跡

2008/10/03 20:29|こんな本を読みましたTB:0CM:0
1985年の奇跡 (双葉文庫)1985年の奇跡 (双葉文庫)
(2006/06)
五十嵐 貴久

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1985年。

それは阪神タイガースが優勝した年。
岡田、掛布、バースが三連続ホームランを打って、快進撃。

そして、おにゃんこクラブが流行った年。

そんな時代を舞台にした、青春野球小説です。

市立小金井公園高校は、徹底した管理教育を行う校長によって、運動部は皆弱小。進学率の向上こそが至上の命題。けれど、そこにも野球部がありました。それこそおにゃん子クラブが始まる4時には練習を終わってしまうというやる気のなさだけど。
そんな小金井公園高校に、超本格派の速球投手が転校してきて・・・。


なんかね。

いいですね。

もうね、予想通りの展開。

これぞ野球小説。

そして、青春小説の決定版みたいなものです。

王道行ってます。

1985年という時代を知っている人には、感慨ひとしお。

私ら世代には、野球漫画といえば、ちばあきおのキャプテンですが、なんかそれに通じるものがあります。実際には、内容はぜんぜん違うのですが、なんか共通するものを感じてしまうのですよね。

両方を知っている人にはわかってもらえるかな。

とにかく、エンタメでした。

永遠の出口

2008/09/27 22:46|こんな本を読みましたTB:0CM:2
永遠の出口 (集英社文庫(日本))永遠の出口 (集英社文庫(日本))
(2006/02/17)
森 絵都

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作家としてのひとつの資質に、記憶力が挙げられるのではないでしょうか。

私たちは、成長してゆくひとつの存在ですが、その過程は千差万別ながら、共通して感じる感情の起伏というものは必ずあると思います。通り抜けてきた過去、そしてそこで経験した記憶。それを余すことなく表現する力に加え、物語をつむいでゆくイマジネーション。それらをひとつに纏め上げる力を持つものこそが、作家として大成する方のようです。

この永遠の出口という作品は、少女の成長に焦点を当てた、青春小説です。
児童文学の旗手として活躍していた森絵都さんが、その枠をはじめて飛び越え、アダルトのために書き上げた作品です。

ここで、彼女は遺憾なくその記憶力を発揮してゆきます。

少女に起こるのは、友人の誕生会での悲しい出来事であったり、担任教師の圧制であったり、思春期に非行に走りかけたり、大失恋する初恋であったりします。

そのどれもが、誰にも起こりうることだけど、決して自身の経験とオーバーラップしなくとも、そこで味わう一つ一つの心の動きはきっと誰もが経験しているものでしょう。

そういった情動を、70年代から80年代という時代をバックに描かれてゆきます。

そう、彼女はきっと目をつぶれば5歳の自分にも、15歳の自分にもなれるのでしょう。

森さんは、私より少しだけ年上です。
ですから、描かれる世相も私よりほんの少しだけお姉さんな彼女にシンクロしたものです。
けれど、ほぼ近い時代を生きてきただけに、その当時の情景が目に浮かぶようで、ほんのり懐かしくもあります。

同時代に青春を過ごした方には、特に、そうでない方もきっと、過ぎ去った「あの頃」を思い描くのではないでしょうか。

ZOKU

2008/09/23 21:54|こんな本を読みましたTB:0CM:2
ZOKU (光文社文庫)ZOKU (光文社文庫)
(2006/10/12)
森 博嗣

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ZOKUとは。

悪の秘密組織。ただし、人に危害を加えることを目的としたものではなく、単なるいたずらをばかばかしいほどに手間ひまかけて実行する組織です。

凝った言い回し、ばかげた設定、登場人物たちの癖のある様子なんかタイムボカンシリーズかと思わせるような、それでいてまったく物語りは何の解決も見せずに淡々と進んでゆきます。

広い意味での冗談小説ですが、私はかなり好きです。

とにかく好き嫌いのわかれる小説で、読む価値なしといってしまえばそれまでかもしれませんが、エンターテインメントとしてはなかなか良いのではないでしょうか。漫画チックです。
実際に、漫画化もされているようですが、きっと漫画になってしまうと主人公たちのとぼけた味が薄れちゃうんじゃないかと要らぬ心配をしてしまいます。

続編も出ていますが、近いうちに読んでみます。

それにしても、スカイクロラシリーズとはまったく違いますね。
作家としての幅の広さ、そして工学博士としての森博嗣さんの多趣味な様子がうかがえます。

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